前回、MP3エンコード(午後のこ〜だ CBR)のビットレート毎の違いを比較しましたが、今回は、MP3エンコード(午後のこ〜だ ABR)のビットレート毎の違いを比較してみたいと思います。前回同様SoundEngineのWaveErrorを使って、エンコード前のWAVEファイルとエンコード・デコード後のWAVEファイル間の信号劣化度を測定します。
信号劣化度の測定
サンプル音としては、WaveGeneratorで生成したピンクノイズ(自然界によくありふれている音)を使用します。フォーマットは、100秒、44.1kHz/16bit/ステレオです。周波数特性はこのような感じ。周波数帯域全体に渡り成分を含み、高域に行くに従い減衰しているのがわかります。
エンコードには午後のこ〜だをデコードはiTunesを使ってみました。以下ビットレート毎の信号劣化度(Average Fixed Mode)の結果を紹介します。
ABR 64kbps ジョイントステレオ
mp3ではかなりの低ビットレート。
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MSE: -21.12 dB Power MSE: -28.76 dB Spectrum MSE: -20.06 dB |
信号劣化度(MSE:二乗誤差平均)は、-21.12dB。この値が低いほど原音に近いことを示します。周波数特性はこのような感じ。
ABR 96kbps ジョイントステレオ
若干低ビットレート。
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MSE: -22.43 dB Power MSE: -30.00 dB Spectrum MSE: -23.13 dB |
信号劣化度は、-22.43dB。64kbpsより改善されています。周波数特性はこのような感じ。
ABR 128kbps ジョイントステレオ
よく使用されるビットレート。CD品質。
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MSE: -23.75 dB Power MSE: -31.20 dB Spectrum MSE: -25.41 dB |
信号劣化度は、-23.75dB。96kbpsよりさらに改善されているようです。周波数特性はこのような感じ。
ABR 160kbps ステレオ
おそらくこちらもよく使用されるビットレート。CD品質。
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MSE: -25.64 dB Power MSE: -32.93 dB Spectrum MSE: -27.67 dB |
信号劣化度は、-25.64dB。128kbpsよりさらに改善されているようです。周波数特性はこのような感じ。
やはり、エンコード時のビットレートが大きいほど劣化度も小さくなっていることがわかります。また、パワーやスペクトラムでも劣化度が低くなり、平均音量の違いもエンコード時のビットレートが大きくなるほど改善されていることがわかります。
ABR 192kbps ステレオ
少し高めのビットレート。
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MSE: -27.68 dB Power MSE: -34.84 dB Spectrum MSE: -29.47 dB |
信号劣化度は、-27.68dB。160kbpsよりさらに改善されているようです。周波数特性はこのような感じ。
ABR 320kbps ステレオ
mp3のCBRの最大ビットレート
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MSE: -34.93 dB Power MSE: -42.02 dB Spectrum MSE: -33.82 dB |
信号劣化度は、-34.93dB。192kbpsよりさらに改善されているようです。周波数特性はこのような感じ。
さすがにビットレートが高い程よい結果になっているのがわかります。また、前回行なったMP3(午後のこ〜だ CBR)と比較してそれほど変わらないという結果になっています。
さらにCBRとABRを比較するために、音量レベルに変動があるソース音源(色々なジャンルの音楽)を5つほど使用して信号劣化度を測定してみました。
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CBR: -27.27 dB, -71.15 dB, -24.92 dB, -29.27 dB, -16.42 dB ABR: -27.63 dB, -69.12 dB, -24.91 dB, -28.92 dB, -16.12 dB |
同様にCBR 128kbpsとABR 128kbpsではあまり違いがない(もしくは若干CBRの方がよい)という結果になりました。信号劣化度と人間にとってのいい音質というのは必ずしも一致しないため、このような結果になっているのかもしれません。
次は、SoundEngineの音量調整での信号劣化度を比較してみます。
ピンバック: WaveError 信号劣化度の比較(2) MP3(午後のこ~だ CBR) | 豆知識
ピンバック: WaveError 信号劣化度の比較(4) SoundEngine(音量調整) | 豆知識